公事師 (Kujishi)
公事師（くじし）とは、江戸時代に存在した訴訟の代行を業とした者。
出入師（でいりし）・公事買（くじかい）などとも呼ばれる。
明治期に代言人制度を経て日本における弁護士制度の源流となったとされているが、その性格は大きく異なる。
訴訟の当事者の依頼を受けて必要な手続方法や訴訟技術を教示したり、必要な書類の作成代行を行ったり、内済（和解手続）の斡旋を行うことが主な業務であった。
その対価として訴訟当事者より礼金を得ていた。
しかし、時には親族や町役人・村役人に成りすまして法廷に出廷して訴訟を補佐したり、古い借金証文や売掛帳面などを買い取って出訴して、相手側に内済を迫って金品を得るなどの不法な行為を行った。
江戸幕府は公事師による訴訟代理行為や濫訴を度々禁じている。
しかし、当時の複雑な訴訟手続に対して適切なアドバイスを与える存在であるとともに奉行所の役人などとの人脈を用いて訴訟を有利に進めるなど、当時の人々にとってはなくてはならない存在でもあった。
なお、奉行所公認の公事代理人であった公事宿とは別のものでああるが、実際には公認の有無の差しかなかったとも言われている。
公事宿の主人・下代が公事師としても活動していていたり、公事宿に雇用されている公事師（「雇下代」）の例も少なくなかった。